SNSなどで「水道水は危険!」「農薬の規制が緩和された!」などの情報を目にして気になっている方はいませんか?
水道水に関わる様々な問題について、今1度しっかりと掘り下げて調べてみました。
昨今、話題になっている有機フッ素化合物やマイクロプラスチック・農薬に至るまでこの記事を読めば網羅できます。
1部分が切り取られた情報から不安になるのではなく、背景を知ったうえで、自分の生活状況に落とし込んで対策を考えることが重要です。
ちなみに筆者は、この記事を書くにあたって色々と調べた結果、浄水器を買い替えるという結論に行きつきました。
その理由もお伝えしていますので、ぜひ最後までご覧ください。
こんな人におすすめ
・水道水は危険と聞いて不安
・水道水中の物質について詳しく知りたい
・なんとなくで浄水器を使っている
この記事を書いた人
日本の水道水は凄い?
まずは、日本の水道水の優れている部分にスポットを当ててみましょう!
世界基準でみた安全性
世界には蛇口から出る水を飲めない国がたくさんあります。
国土交通省が令和4年に出した最新の資料によると、水道水を飲める国は世界に11カ国のみです。
(水質に関しては世界で様々な基準がありますが、こちらは日本人にとって安全な水を対象にしています。)
確かに、日本人は海外の水道水で歯磨きをするだけでお腹を壊すこともあると言いますよね。
世界基準で見ると、日本の水道設備がいかに整ったものなのかが理解できます。
水道水質基準
これから日本の水道水のことについて考えていく上で、まず知ってほしいことがあります。
日本の水道水は「水質基準」「水質管理目標設定項目」「要検討項目」の3つの基準があり、それぞれ基準値や目標値が定められており、ピラミッドの上に行くほど、重要視されています。
水質基準
→大腸菌・トリハロメタンなど
水質管理目標設定項目
→残留塩素・農薬など
要検討項目
→ビスフェノールA・銀など
個人的に、BPAと呼ばれるビスフェノールAは要検討項目で良いのかと疑問に思いますが、この分類は定期的に議論がされており見直されています。
塩素消毒
塩素とは
日本の水が安全に飲める理由の1つとして「塩素消毒」が挙げられます。
水道水の原水となる河川や湖の水には、病原性のある微生物などが含まれている恐れがあります。
塩素の強い殺菌力によって原水を消毒し、さらに各家庭までその状態を保つためには必要不可欠な処理だと言えます。
地域差
水道水の残留塩素は0.1mg/ℓ以上と定められています。
上限は定められていませんが、おいしい水の観点から1mg /ℓ以内という目標値は設けられているようで、0.4mg/ℓを超えると味に影響が出てくるようです。
実際に地域によって残留塩素濃度は異なり、かなりの差があります。
これは原水の清潔さが異なるためです。また、浄水場から近い地域では残留塩素濃度は高くなる傾向です。
1度お住まいの地域のデータを調べてみてください。
私の住む札幌市の平均値は0.44mg/ℓ(令和4年)
残留塩素の問題点とは
では残留塩素には健康上の問題点があるのでしょうか?
厚生労働省は毒性評価について以下のように示しています。
7.毒性評価・利水障害
塩素は、細菌類、特に消化器系病原菌に対して微量でも迅速な殺菌効果を示すので、残留塩素は殺菌効果の保証としての意義が大きいが、多すぎると塩素臭が強くなり、金属などの腐食性を増す障害ともなり、また、水中のフミン質などと反応してトリハロメタン等を生成する。
我が国では、病原菌による汚染のおそれに対する対策として、水道法第 22 条の衛生上の措置の一つとして、給水栓における水が、遊離残留塩素を 0.1mg/L(結合残留塩素の場合は、0.4mg/L)以上保持するように塩素消毒することとされている。一方で、快適水質項目として、おいしい水の観点から、1.0mg/L 程度との目標値が設定されている。毒性の観点からは水道水程度の残留塩素を含む水を飲んでも中和されるので健康上の影響は生じないと考えられており(水道水質ハンドブック)、また、WHO 第2版にもあるように、毒性で問題となるレべルの濃度よりも臭味の閾値が低い(WHO,1996)。
なお、毒性に関して、WHO 第2版では、次のようなガイドライン値を提示している。
ヒト及び動物が飲料水中の塩素に暴露した場合、処理に関した明確な有害作用はみられなかった。
IARC は、次亜塩素酸塩はヒトへの発ガン性に関しては分類できない(グループ 3)と結論した(IARC,1991)。
飲料水中の遊離塩素のガイドライン値は NOAEL15mg/kg 体重/日から得られるが、この値は齧歯類に次亜塩素酸塩の形で塩素を含む飲料水を最高 2 年与えたときの毒性に基づいている(WHO,1996)。この NOAEL への(種間及び種内変動の)不確定係数 100 の適用により、TDI150μg/kg体重/日となる。TDI は 100%飲料水に割り当てることから、ガイドライン値は 5mg/L(丸め値)となる。しかしながら、この調査では有害作用のレベルが確認されなかったことから、これは保守的な値であることに留意しなければならない。大半の人は 5mg/L 未満で塩素あるいはその消毒副生成物(例,クロラミン)の味がわかり、0.3mg/L という低レベルで感知する人もいる。
要約すると、飲用する分には中和されるので影響はないと考えられている。
齧歯類での研究からも、残留塩素5mg/ℓまでは有害作用は起こらないだろう。ということになります。
残留塩素は、活性炭によって除去することができるとも示されています。
トリハロメタン
水中のフミン質(植物などが微生物によって分解されるときの最終分解生成物)などと塩素が反応してできるのがトリハロメタンという物質です。
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)では、トリハロメタンの中に含まれる「クロロホルム」と「ブロモジクロロメタン」を「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある物質(Group2B)」に分類しています。
余談ですが、このグループ2Bには、人工甘味料のアスパルテームや漬物・わらびなどが含まれます。
なんだ、漬物と同じ程度かと思った方へ
動物実験などから、胃の中で食塩の濃度が高まると胃がんのリスクが上がることが示されており、漬物というよりは1度に塩分を摂りすぎてしまうことが問題と言えます。
塩分が過剰になることと同じ程度、身体に影響があるとすれば納得できますよね。
そのため、トリハロメタンは水質基準が定められています。
・クロロホルム
→0.06mg/L以下
・ブロモジクロロメタン
→0.03mg/L以下 など
トリハロメタンは水道水を10分以上沸騰させることで除去することが可能です。
水道管・給水管の劣化
塩素には、実は水道管や給水管を錆びやすくしてしまう作用もあります。
経年劣化するものであり、対策していないと錆などが水に混入する場合があります。
有機フッ素化合物
昨今ニュースでも度々問題となるのが、PFOSやPFOAと呼ばれる有機フッ素化合物です。
水や油をはじく性質があり、フライパンや包装などの身近な製品、泡消火剤などに広く用いられてきました。
しかし、分解されにくく環境中に長期間残留する上に生体内に蓄積しやすいという性質も持っており、近年では有害性や免疫阻害性が問題視されています。
私が今1番懸念しているもの!
世界中で懸念されている物質ですが、国内ではこのような報告があります。
北海道大学が行った、北海道内の母子を対象にした健康追跡調査で、有機フッ素化合物PFOSの母体の血中濃度が高くなるほど、4歳児までの乳幼児が感染症にかかるリスクが増加することや、女児の低体重出生の傾向が確認されたことが分かりました。
令和2年4月にようやく「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)」が水質管理目標設定項目に追加されました。
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)の量の和として0.00005mg/ℓ (50ng /ℓ)以下が基準となっています。
実は、日本各地でこの基準を超えている水道水が見つかっており対策が急務とされています。
更に、そのような水道水を飲用していた住民の血液からも検出されており、健康との因果関係も調査されているところです。
2023年10月には国の値の20倍を超える濃度の有機フッ素化合物が浄水場から検出された地域もあり、該当する地域では水道水を飲み水として利用しないよう呼びかけられたこともあります。
フォーエバーケミカルと呼ばれる有機フッ素化合物と水の関係については、今後どんどん明らかになっていく部分であり、今のうちから対策しておいて損はないと私は考えます。
検出量には地域差があり、工場や軍事基地の周辺は高くなる傾向があるようです。自分の住む地域の値を調べてみてください。
マイクロプラスチック
水道水にはマイクロプラスチックの混入もあるとの研究結果が出ています。
首都圏内5箇所の水道水から0〜12.8個/ℓのマイクロプラスチックの存在が確認されたとのこと。
プラスチック粒子についてはペットボトルの方が深刻で、2024年1月に発表されたアメリカの研究では、アメリカで販売されている3つの人気ブランドのペットボトルの水について試験を行ったところ、1リットルあたり平均で24万個のプラスチック粒子が見つかったことが示されています。
さらに、その90%はマイクロプラスチックよりも小さいナノプラスチックだったそう。
マイクロプラスチックが人にどのような影響を与えるかはまだ正確には分かっていませんが、こちらも早めの対策をしておきたいところです。
農薬
2022年4月、厚生労働省が定める水質管理目標設定項目の農薬類の目標値が変更されたことをご存知でしょうか?
目標値が緩和された農薬もあれば、新たに定められたり対策が強化された農薬もあります。
《緩和された農薬》
・ホスチアゼート 0.003mg/L →0.005mg/L
・ウニコナゾールP 0.04mg/L →0.05mg/L
《追加された農薬》
・クロロピクリン 0.003mg/L
追加は分かるけど、なぜ緩和される農薬があるの?
例えば、ホスチアゼートを緩和するに至った理由として厚生労働省はこのように述べています。
農薬類の目標値は、WHOが飲料水の水質基準設定にあたって採用している方法を基本とし、食物等他の暴露曝露源からの寄与を考慮しつつ、生涯にわたり連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準を基に設定しています。
具体的には、1日に飲用する水の量を2L、人の平均体重を 50kg との条件で、1日当たりの摂取量である許容一日摂取量(ADI)の 10%を水道水由来の暴露と割り当てて算出しています。算出方法は下記のとおりです。
目標値=(ADI)×(50kg:平均体重)÷(2L:一日の飲用量)×(0.1:割当 10%)
現状のホスチアゼートの目標値 0.003mg/L は、ホスチアゼートが平成 15 年の水質基準等の見直しにおいて農薬類第3群に位置づけられた際、ADI=0.001mg/kg 体重/日より算出されています。
今般、内閣府食品安全委員会の食品健康影響評価により ADI=0.002mg/kg 体重/日と新たに評価されましたので、目標値案は0.005mg/L となります。
食品健康影響評価は、全ての飲食物に対するものであり、その時点において到達されている水準の科学的知見に基づいて、客観的かつ中立公正に行われるものとなっているため、新しい ADI を用いて目標値を見直すことは妥当と考えます。
パブリックコメントへの回答はこちら←「水道水の水質管理目標設定項目の改正案」に関する御意見と考え方
ADI=ある物質について、人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量が再評価により変更されたためということです。
農薬が水道水に混入する!との表現を目にすることが
ありますが、それは間違いです。
それよりも気にしておかなければならないことがあると私は考えています。
実は世界で広く使用されているネオニコチノイド系と呼ばれる、神経や発達に毒性があるとされる農薬が、その他農薬よりも優先度が低く分類されている点についてです。
水道水のネオニコチノイド濃度の全国調査によると、周りに水田がある地域では検出濃度が高いとされています。
ネオニコチノイド系農薬は活性炭で除去できることが分かっています。
水道水には塩素の他にも様々な問題点があることが分かりました。
そのため、基準も定められてはいますが、まだまだ研究が進んでいなかったり、人体への影響が分からない部分も多く、予防の意味での対策が必要だと改めて感じました。
水道水の問題点・すべきこと
分かっていないことが多い
ここまで記事を読んでいただいた方はもうお気づきかと思いますが、すでに研究が進んでいるものに対してはしっかりと対策がされている一方で、リスクは高いとされているけれど未だ不明点の多いものに対しては対策が不十分と言えます。
日本はかつて人口あたりの胆のう癌発生率が高く、その原因が塩素処理で分解しない水田用除草剤CNPが水道水に混入した為であることが指摘されて使用が中止されるまで、30年以上も使用されてきたという歴史もあります。
有機フッ素化合物・マイクロプラスチック・ネオニコチノイド系農薬については、決して水道水だけの問題だけではありませんが、水は毎日口にするものだからこそ、自衛をしておく必要があるのではないかと思います。
すべきことは予防
塩素やトリハロメタンについては、沸騰させることで対策できますが、その他の気になる物質を取り除くためには自宅に浄水器を付けるしかありません。
さらに、有機フッ素化合物などの除去能力も必要ということが分かります。
さまざまな浄水器がある中で、どれくらいのスペックの商品を使えば除去できるのか気になりますよね。
今お使いの浄水器は何がどれくらい除去できるのか知って使っていますか?(私はなんとなくで買っていました…)
今まで使用していた浄水器では浄水能力に限界があること、お手入れに気をつける必要があることを知り、買い換えることを決意しました。
浄水器についてはこちらの記事で解説しています↓
私が買い替えた浄水器についても載せていますのでぜひチェックしてみて下さい!