ここ数年で、世界的に自然派ワインが流行りつつあり、日本のレストラン等でも置かれるお店が増えています。
身体に優しいとされているワインには、オーガニックワインやビオディナミワイン、ヴァン・ナチュールワインが挙げられますが、この中で特に厳しい基準が課せられているのはヴァン・ナチュールワインです。
ヴァン・ナチュールは2020年に試験的に認められた自然派認証の為、まだまだ知らない方も多いのではないでしょうか?
この記事では、ヴァン・ナチュールワインについて解説するとともに、オーガニックワインやビオディナミワインとの比較をすることで、結局どのワインが身体に優しいのか考察しています。
この記事を最後まで読んだだけで、自然派ワイン通になれちゃいますよ!
こんな人におすすめ
・なるべく酸化防止剤(亜硫酸塩)が含まれないワインを知りたい
・自然派ワインの種類やおすすめについて知りたい
この記事を書いた人
ナチュールワインの基礎知識
「ナチュールワイン」とは
ナチュールワインとは自然派ワインのことを指し、フランス語でヴァン・ナチュールと呼ばれています。
今までは定義が曖昧なものだったのですが、INAO(フランス原産地名呼称委員会)が2020年にヴァン・ナチュールにおける公式な定義を認可したことで話題となりました。
この認可を受けたワインは、「ヴァン・メトード・ナチュール」と呼ばれています。
製法のこだわり
認可を受けるにはかなり厳しい条件があることでも有名です。
- 原料のブドウはオーガニック認証を受けたもので手摘みである
- 亜硫酸の添加は発酵前や発酵中は不可、総添加量は30mg /L以下
- 野生酵母のみで醸造する
- 濾過や逆浸透膜、補糖や補酸など、ほとんどの人的介入の禁止
ちなみに、日本のワイン醸造における亜硫酸の使用上限は350mg /L以下です。
30mg /L以下がどれほど厳しいのか、この比較だけでもお分かりいただけるかと思います。
ロゴでの見分け方
亜硫酸使用量によって2種類の認証ロゴステッカーが貼れることになっています。
左は亜硫酸の添加が30mg /L以下のワインに付けられるロゴ、右は無添加のワインに付けられるロゴです。
実際は認可を取得していないワインの方が多い
上記のロゴが付いていれば分かりやすいのですが、ワイン専門店に行ってもほぼ見かけることはありません。
ナチュールワインは規模の小さな生産者が多いため、認可を受ける費用の余裕がない場合もあったり、認可を受けることに興味がなかったりするからです。
その為、上記ロゴが付いていなくても同じようにナチュラルな製法で作られているワインも多く、ナチュールワインと呼ばれています。
国によっても何をもって「ナチュラル」とするのか基準がまちまちな為、かなり曖昧になってしまっているということも覚えておいた方が良さそうです。
オーガニックワイン・ビオディナミワインとの違いは?
ヴァン・ナチュールの他にオーガニック、ビオディナミという2つのジャンルがあります。それぞれ見ていきましょう。
オーガニックワインとは
オーガニックワインとは、オーガニックブドウから造られるワインのことです。
原則として、化学肥料、農薬、除草剤は不使用、遺伝子操作や放射線処理が禁止された有機農法によって生産されたブドウを用いて造られます。
オーガニック認証を受ける必要があり、EUのユーロリーフやフランスのAB認証、ドイツのデメター認証などが挙げられます。
ビオディナミワインとは
ドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した、「土壌が本来持つエネルギーと自然界に存在する力で農作物の生命力を高める」という考え方に基づいた、「ビオディナミ農法」で造られたワインのことです。
月の満ち欠けにも注意を払っているなど、少しスピリチュアルなワインです。
こちらも、オーガニックブドウであること等の基準がありますが、認証されたものではない為ラベルで判断することはできません。(ただし、ドイツのデメター認証を取得するための条件となっています。)
比較してみた
オーガニック(EU) | ビオディナミ | ヴァンナチュール | |
---|---|---|---|
有機栽培 | |||
加熱処理 | |||
亜硫酸使用(mg /L以下 ) | 100〜150 | 70〜90 | 0〜30 |
認証制度 |
亜硫酸塩の裏側
亜硫酸塩とは
劣化や酸化・微生物汚染を避けるために、製造途中や瓶詰め後に使用される食品添加物です。
肝臓や胃腸へのリスクが懸念されており、質の悪いブドウで作られたワインにはたくさん使用されています。また、甘口になればなるほど添加量は増える傾向です。
ここで紹介しているワインは、必要最低限の使用や無添加にこだわったものとなっています。
ちなみに、日本のスーパー等で安く売られている「酸化防止剤無添加ワイン」はボトルごと50度前後に加熱処理をして微生物を殺菌・酵素を破壊しているため、本場のワインとは別物といえる。
使用していなくても記載されている
ヴァン・メトード・ナチュールワインのように亜硫酸の添加がされていないワインにも、ラベルをみると「亜硫酸塩」との記載がありますが、これはなぜでしょうか?
実は、亜硫酸は添加していなくても酵母がアルコール発酵する過程で10mg/L前後はワイン中に生成されるんです。
ワインの亜硫酸表示義務は10mg /L以上からなので、添加していなくても輸入の際に上のようなラベルが貼られてしまうということです。
買う側としては分かりづらいですよね。
どのワインが良いのか
身体に優しいという観点で言うと、亜硫酸の使用が少ないワインを選ぶべきです。
1番少ないものを選ぶとなるとヴァン・メトード・ナチュールやそれに準じたワインを選ぶべきですが、オーガニックワインでも亜硫酸使用量は通常の25〜35%減です。
ただ、亜硫酸の添加がされていないワインの場合、開栓後の劣化が早く、すぐに飲みきる必要があるので、時と場合によって選ぶワインを変えると良いのではないでしょうか。
(例えば、飲みきれる日はヴァン・ナチュール、少しだけ飲みたい日はオーガニック等)
ナチュールワインを飲むときに気をつけるポイント
購入後
ナチュールワインは、揺れによるダメージが大きいと言われています。 購入後、2日〜3日は横にして休ませると安定します。
保管方法
繊細なワインゆえに、温度変化に敏感です。 一定温度を保てるワインセラーに入れるのが理想的とのことですが、ワインセラーが家にある方は少数派だと思うので、冷蔵庫や野菜室で保管しましょう。
また、亜硫酸塩の使用量が少ない為、開栓した後はすぐに飲みきるようにしましょう。
できるだけ品質を保たせるように、こんなものも用意してみました!(ナチュールワインを出しているお店が使っていたので真似しました。)
注ぎ方
ナチュールワインは、黒っぽい固まり(澱)や、透明な粒々(酒石)が入っていることがあります。ワインの様々な成分や酵母などに由来するもので、異物ではありません。
飲んでも影響はありませんが、グラスに注がないようにゆっくりと注ぎましょう。
おすすめワイン3選
今回、ナチュールワイン専門店に行っておすすめを聞いてきました。興味のある方はぜひ参考にしてみてください!
リースリング・ナチュール2021
ヴァン・メトード・ナチュールの認証を受けたオレンジワイン。
アルザス・ブラン2020
ビオディナミワイン。ラベルが点字になっているのが面白いですよね。
ジャンドン・ロッソ2021
畑では一切の農薬や肥料、堆肥でさえも必要としない不耕起による栽培を行っているイルファルネートシリーズ。
ナチュールワインを出すお店で飲んだ時にその味に感動し、コスパの良さにも感動したワインです。
まとめ
自然派ワインにはいろんな種類がありますが、国や認証機関によって定義はさまざまで、かなり曖昧なものです。
この曖昧な部分にメスを入れる形で始まったのが、ヴァン・ナチュール認証ですが、まだまだ普及はされていないのが現状。
気になる亜硫酸塩についても、記載の有無だけで良し悪しを判断するのではなく、「この認証があるということはこれくらいの使用量だ、もしくは使っていないんだ」という風に分かるようになるとワイン選びの幅がよりいっそう広がります!
ナチュールワインのように、できるだけ自然に身をまかせたワインは、その土地の味がするとも表現されます。ぜひ、自分好みの1杯を探してみてください。